公正証書遺言及び遺留分
前回の「遺言書の種類について」では、遺言書の種類についてお伝えしましたが、今回は遺言書の種類の中で「公正証書遺言」についてと遺言書作成の時に特に注意が必要な「遺留分」について詳しく掲載します。
『公正証書遺言』とは?
公正証書遺言とは、遺言者が公証人の面前で、遺言の内容を口授し、それに基づき公証人が遺言者の真意を文章にまとめ作成する遺言書のことです。
その際、証人2人以上の立会いを要します。この場合の証人は、遺言者の推定相続人や未成年者、公証人の親族等はなることができません。適当な証人が見当たらない場合は、公証役場にて有料で紹介してもらうことができます。
公正証書遺言のメリット
- 遺言者が死亡後、裁判所の検認を受ける必要がない。
- 法律の専門家である公証人が、整理した内容の遺言にするので、方式の不備で遺言が無効になる恐れがない。
- 原本が公証役場に保管されているので、遺言書の破棄や改ざんをされない。
- 自分で自書する必要がない。(口や耳の不自由な方も、通訳人の通訳により作成することが可能)また、公証役場に出向くことが困難な場合は、公証人が自宅や病院等へ出張してくれる。
公正証書遺言のデメリット
- 自筆証書遺言に比べると費用がかかる。
※自筆証書遺言は改ざんや紛失する恐れなどがあります。公正証書遺言は上記のようなメリットのある遺言書ですので、遺言書作成の際には公正証書遺言をおすすめします。
『遺留分』とは?
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人が、法律上取得することが保証されている相続財産の一定割合のこと。遺留分算定の基礎となる遺産は、被相続人が相続開始時に有していた財産の価格に相続開始前1年以内になされた贈与などにより残っていない財産の価額を加え、債務を控除して算出されます。
遺留分の率(それぞれの法定相続分の率に乗じる率)
- 配偶者や子供、孫が相続人である場合・・・被相続人の財産の2分の1
- 親、祖父母が相続人である場合・・・被相続人の財産の3分の1
- 兄弟姉妹、甥姪が相続人である場合・・・遺留分はない
遺留分を取り戻すには
遺留分を侵害された者は、相続財産の返還を請求することができます(遺留分の減殺請求)。請求の方法に制限はないが、後になってから請求を受けていないと言われることのないように、内容証明郵便等により意思表示を行う必要があります。(家庭裁判所の調停を申し立てただけでは、意思表示とはなりません)
この意思表示は、相続開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年又は相続開始から10年を経過したときは請求できなくなります。
遺留分を侵害した遺言書は無効か
遺留分を侵害した遺言書であっても、遺留分を侵害された者が上記の意思表示期間に請求しなければ、そのままその遺言書のとおりの効力を維持します。つまり、遺言書で財産を相続又は遺贈される人はその内容どおりに不動産や現金などを受け取ってよいですが、遺留分の減殺請求をされた場合には、原則その侵害した分をその相続人に支払わなければなりません。